院長のつぶやき

随想(苫小牧民報新聞ゆのみより)

2週間に1度、月曜日の苫小牧民報に掲載された文章です。
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私の禁煙体験

  平成11年7月5日 苫小牧民報「ゆのみ」より

 医学部6年になって直ぐの頃、さあこれから1年間医師国家試験に向けて猛勉強しなければならないが、このストレスに耐えるためタバコを吸おうか、お菓子を食べながらにしようか考えた。以前、大先輩の医師が「タバコをやめるつらさを知らない医者が患者にタバコをやめろと言う資格はない」と言っていたのが頭のすみに残っていた。

 はじめは、おいしくないと思いながらも我慢して1日5~6本吸っていた。ところが次第に食後の1本がうまいと思うようになり、1日20本前後になった時はタバコを吸う手つきもサマになってきた。1年が過ぎ無事に医師国家試験に合格しタバコをやめようとしたが、病院での仕事が忙しく精神的ストレスも強くてやめられなかった。
 かぜをひいた時に何度かやめようとしたが、はじめ2日くらい我慢できたのが次第に半日になり、ついには禁煙を決心して30分後には我慢できなくなった。禁煙の失敗を繰り返し、間隔が短くなるにつれ「なんて自分は意志が弱いんだ」とまざまざと思い知らされ、自分に自信がなくなった。「なんて自分はだめな人間なんだ」とさえ思うようになっていた。

 タバコを始めてから4年過ぎた頃、どうしても成し遂げたい一生の大事があり、願をかけることにした。お茶断ちならぬタバコ断ちである。神様仏様、1ヶ月タバコをやめますので願いをかなえてくださいと。

 禁煙に成功し、1ヶ月目にタバコを吸ったところ「まずい!」と思い、願掛けを1ヶ月から一生の禁煙に変更した。それから2~3年は、タバコを探し回ってイライラしている夢、タバコを吸っている自分に気がついて「しまった!」と悔やんでいる夢を何度も何度も見た。

 禁煙は、自分の人生をかけた闘いだった。

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